'12/10/19 (Fri)
ここに到るまでの話の後篇である。
頂上にある避難小屋の軒で雨を避けホッと一息ついた後、今夜泊まる山小屋を目指し山を下りた。
頂上付近の東京側はしっかりした山道であるのに埼玉県側は雑木が鬱蒼と生い茂りなんとも薄気味悪く、そして狭く大小様々な岩だらけの道なのであろう。
こんなとこでも財がものを言う格差社会の波紋が拡がっているのだろうか。
先頭はダイちゃん、続いて僕とスケさん、そしてしんがりはサザさんという列になりはしたが、ものの5分と経たないうちにダイちゃんの単独一騎駆けとなった。
山慣れしている人は下りが強いのだと思った。
体力だけではどうにもならない。
しばらくすると下からダイちゃんが大声で、道は合ってるか?と尋ねてくる。
サザさんが、合ってる!と返すもダイちゃんには届かない。
間に入っているスケさんが拡声器になったかのように大声でそれを伝える。
ダイちゃんがそれを聞いて更に突き進む。
途中、ミニチュアダックスフントをカバンに入れた2人組とすれちがった。
クリッとした目がカワイイ。
そしてさっきから独り言のようにサザさんが何事か呟いている。
よくよく聞いてみると、下に山小屋の給水タンクが見える、というのであるが、僕とスケさんの目には全く確認できない。
さすがサザさん!過去に3回も来ている人は違う!と思った。
山小屋を目指す足取りは軽くなりどんどん山を下った。
しかし、確か頂上から20分下ると山小屋のはずなのであるが。。。
休憩中のダイちゃんに追いついた。
4人そろったところで、ダイちゃんからこんな一言が。
「 もう1時間近く経つが山小屋なんてないぞ。 」
えっ?!もうそんなに歩いたの、と思ったが僕は時計を持っていないので確認のしようがない。
3回も来ているサザさんはこの道に間違いはないと言うのであるが、1時間も歩いて山小屋に着かないというのは絶対におかしいという疑惑だけが残り、地図を確認するまでもなく頂上まで戻るという結論に至った。
ガーン
給水タンクの一件は僕もスケさんも黙っていた。
結論が出た以上今ここで持ち出しても何も意味をなさないのがお互い分かったからであろう。
とりあえず4人は無言のまま今下りた道を登り始めた。
僕の足取りは一気に重くなり、あの岩だらけの道を想像すると更に重たくなるのであったが、明るいうちに頂上には着きたいという思いから出せる力を振り絞った。
行軍は2−2に分かれ先頭グループはダイちゃんと僕になり、途中後続組を待つ間に地図を確認した。
どうやら埼玉県側でなく山梨県側に下りてきてしまったようなのである。
道を間違えてしまったのはほぼ確実だとすでに思っていたのであまりショックはなかったのだが、そうだとしても埼玉県側に下りる道などなかったという記憶が僕にもダイちゃんにもあった。
とにかく訳が分からないので避難小屋の人に聞いてみようとダイちゃんが言ったので、僕は驚いて、避難小屋に人なんかいたの?と返した。
さっき避難小屋の軒で雨避けをしている時にダイちゃんは中から数人の話声を聞いたとのことである。
流石だ。
後続組がやってきたのでダイちゃんが再び登り始めた。
僕はそれに続いたが、明るいうちに到着できるのか少し不安になった。
そんな不安もよそに意外とあっという間に避難小屋に戻ることができ、しかもこの辺りは開けているので森の中より大分明るかった。
どうやら1時間というのはダイちゃんがサバ読んだのだと思った。
実際には30分かそこいらだったのだろう。
しかしあの時ダイちゃんが不信に思わなかったら一体どうなっていたのだろうか。
そして同時にある思いが頭をよぎった。
サザさんが見たものは一体なんだったのだろう。
親切にも避難小屋に今夜泊まろうとする人が途中まで道案内してくれた。
結句僕らは頂上を間違えていたのであったが、しかしそこには山頂と書かれた棒が立っていたのであり、しかもご丁寧に小石までもが山積みまでされていたのである。
なぜこんなことをするのであろう。。。
避難小屋から本物の山頂まではわずか1分ほどであるが、さすが本物は東京都最高峰であり日本100名山でもある山の山頂であり、堂々としたものであった。
しかしこの天気では折角の山頂でありながらも何も見ることはできず、ここが山頂であること以外には何も得るものはなかった。
案内してくれた人が山小屋へはあそこから下りればいいと教えてくれ、丁重にお礼を言い僕らは山を下った。
山に悪い人はいない。
頂上へは東京都からも埼玉県からも山梨県からも登ることができるのだが東京都の道が一番いい。
続いて埼玉県、山梨県の順であるが、どちらもすぐに森に突入する。
山梨県の悪路で慣れたためか埼玉県の道は大分やさしく感じたが、昨日の雨でできたのであろう水溜まりの連発には誰もが閉口した。
あっという間に辺りは暗くなったが、山小屋の明かりが見えたときには本当に嬉しかった。
部屋でビール → 食堂で夕食 → 部屋で芋焼酎 →
20:57山小屋の人がやってきて今しゃべってるのはここだけだ、消灯後は一切しゃべるなと念を押される →
21:00消灯 → 6:00起床 → 食堂で朝飯
山小屋に着いた時には真っ暗で分からなかったのであるが、こんな感じのとこに泊まったのである。
今日は昨日とは打って変わっての快晴、空気は爽やかに澄んで涼しさを通り越し冷たくもあるが、太陽の光がほんのり肌を温める。
頂上へ向けて出発の準備が整い、僕らは足取り軽く歩き始めた。
山小屋の敷地を出ればすぐに森であり、昨日と同じ道だが、登りの時は頂上まで30分かかる。
昨日は暗くて自分の足元しか見えなかったが、あまりの森の美しさに途中僕は足を止めた。
まるで絵本に出てくるおとぎの国の森のような森なのである。
森にこんなにも感動するものかと改めて自分の感受性に驚き、その興奮をさらに跳ね上げるかのように頂上に到着!!