'12/10/12 (Fri)
ここに到るまでの話である。
ホリデー奥多摩1号に乗るべく新宿駅に向かう。
待ち合わせ場所は南口のドトールの前だ。
登山への興奮が冷めやらず前夜はほとんど眠れずに朝を迎えたため、常識的な集合時間よりもずいぶん前に到着してしまった。
天気は雨だが、快方に向かうという予報。
待ち合わせ場所には僕と似たようなスタイルをした人たちをたくさん見た。
みな山を目指しているのだ。
友達のスケさんとその兄のサザさん、そして彼らのいとこのダイちゃんがやって来た。
僕はスケさんに誘われての参加なのだ。
話が来たのはおよそ2ヶ月前。
山小屋1泊の登山という計画で、山具はちゃんと揃えておくようにという乱暴な話だった。
だいたい僕は富士山と高尾山、中学の修学旅行で登った蓼科山くらいしか登ったことがなく、何一つ山具など持っていなかった。
そこで思い浮かんだのが友達のマサシ。
とりあえず山のことならマサシに聞いてみればいいのである。
ちょうどタイミングよく休みが合って山具屋に一緒に付き合ってくれることになった。
ザック、ブーツ、アパレル、小物など色々見て回れることができ、何もゲットはしなかったが頭の中におおよそのアウトラインが出来上がった。
その後は何度も山具屋に足を運びアイテムを揃えていった。
さて、メンバーが4人全員揃い、乗り込んだホリデー奥多摩1号は奥多摩駅を目指すべく出発した。
奥多摩駅に着いたときにはほとんど雨は上がり、予報どおり快方に向かっていった。
駅からはバスで登山口まで運んでもらった。
山奥でもSUICAが使えたのはありがたい、さすがは東京都だ。
登り始めるとさすがに暑い。
ボタンダウンのチェックのシャツを脱ぎTシャツ1枚になる。
先頭を行くのはダイちゃん、ダイちゃんは東北の名だたる山は8割がた制覇したという健脚の持ち主でとても還暦ま近とは思えない。
登山は80まで楽しめるとダイちゃんは言っている。
次に続くのは僕で、後ろはスケさんとサザさんだ。
山道は山肌に沿って進んでいくのだが、道幅は思ってもみなかった細さであり、谷を見下ろせば斜面は垂直に切り立ち、目はクラクラ、足はガクガクしてきそうなほどであった。
ここも東京都であるからには税金で道を広げてほしいくらいである。
トレッキングは順調に進み、水とエネルギーを補給するべく軽い休憩をとった。
ザックから取り出したのはスティック状のドライパイナップルだ。
パイナップルの線維に程良い歯ごたえがあり、凝縮された独特のうま味が口いっぱいに広がり、¥298のわりには思いがけぬ美味さであった。
皆にも食べてもらったがかなりの高評価を得た。
10分も休むとあれだけ熱かった体が急激に冷たくなった。
しまったチェックのシャツを取り出して着た。
休憩を終え歩き始めると3分もしないうちにまた体が熱くなった。
ついさっき着たシャツをまた脱ぎザックにしまう。
服の調節に忙しい。
ダイちゃんからなるべく汗をかかないように服を調節するようにと教わった。
山では自分の掻いた汗が命取りになるとのことである。
しばらく登ると中腹の山小屋に着いた。
朝の曇天もすっかり晴れ上がり日差しがポカポカと暖かく気持ちが良い。
ここで昼食も摂れるのだが、もう少し進もうということになった。
途中驚くべき光景を目にした。
あの細い山道、落ちたらまず助からない山道、税金で道幅を広げてほしいくらいの山道を自転車をかついで降りてくる4,5人のグループと出会った。
もちろんマウンテンバイクなのであるが、こんなとこを走るのか!、それもそうだが走れるとこならまだいいが、走れないようなとこをバランスとりながらかついで行くのか!風吹いたらどうなんの?、と思った。
世の中いろんな人がいるとは言うが、いや、山にはいろんな人がいるのだろう、とにかくド肝を抜かれた。
1時半過ぎにちょっとした広場に到着したのでそこで昼食になった。
梅と鮭のおにぎり、卵焼き、ウインナー、きゅうりの浅漬けと全てスケさんとサザさんが作ってきたものだ。
こういうとこで食べるおにぎりはなんと美味いのだろう!!
有り難く頂戴した。
体を動かさなくなると途端に体が冷える。
標高は1700mくらいで、しかも雲の中に入ったようで気温もかなり下がってきた。
チェックのシャツだけではしのげず、普段は真冬のランで着る防寒用の上着を着た。
山ではあまり見かけない格好になった。
特大のおにぎりで胃の腑を満たした後は頂上を目指すべく出発した。
1時間半ほどで到達だが、途中雨に降られた。
ここにきて雨かと思ったが、使うかどうか分からないにも関わらず必須ということでモンベルで買ったカッパの出番になったので妙に嬉しかった。
防寒用の上着の上に着たのでかなり温かくなり、しかも山用の格好に戻った。
ようやく山頂にたどり着いたがこんな天気で何も見えない。
今夜泊まる山小屋はここから埼玉県側に20分程降りたところにある。
うす暗くはなってきたが、余裕をもって到着できそうである。
しかし、この後背筋も凍りつくようなハプニングが起ころうとは誰一人予想だにしていなかった。