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'12/7/3  (Tue)

午前0時、携帯が鳴る。

ケンイチがマンションの下に着いたという。

彼がここに来るのは何年ぶりだろうか。

ここ数年は僕がケンイチを迎えに行く。

僕はサーフボードとウエットスーツと水の入ったポリタンクを抱えて部屋を出る。

ケンイチの赤いワゴンに乗り込みマサミの家を目指す。

この時間なら下で1時間程で杉並区のマサミの家に着く。

ケンイチは以前マサミの家の近くに住んでいたのだが、久々に行くので道を覚えているかわからんと言う。

「 ナビは? 」と聞くと、「 入ってない 」と返ってくる。

近所だったから入れる必要がなかったのである。

ドライバーの記憶は確かなもので、見覚えのある場所に来たらサクサクと路地を曲がり1時間前の心配などよそになんなくマサミの家に着いてしまった。

マサミとも海、山を共にして15年程経つがマサミの家に行くのは初めてだ。

特別な期待などないがどんなところに住んでいるのかと思えば、2階建てのわりと古風なでかい家だ。

そこに何人かで住んでいるのだという。

僕は助手席をマサミに譲り、後ろの席で間もなく訪れるであろう睡魔のために寝心地を確かめる。

 

目指すは伊勢神宮であるが、その前に愛知県の伊良湖という海岸でサーフィンをするのである。

事の発端は、ケンイチが今年に入ってツイてないから伊勢に行きたいと言い出したのが始まりで、2週間ほど前のことだったかと思う。

僕は、それなら付き合ってもいいと言い、ついでに伊良湖でサーフィンしてから行こうという計画になった。

マサミは二つ返事で行くといい、キヨアキさんはその日は京都から兄が出てくるということで NG になった。

 

赤いワゴンは環状八号線から東名高速に入り、僕は寝に入った。

車は御殿場で東名から今春開通した新東名に入り、小雨のなか静岡SAで止まった。

トイレと彼らの一服とそしてドライバーがケンイチからマサミに変わる。

新東名が東名と再び合流し豊川ICあたりで赤いワゴンは一般道に入った。

ハンドルを握っているのはマサミであるが、助手席のケンイチはカーナビをほとんど無視し自らの感覚で太平洋を目指しナビしていた。

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伊良湖岬よりすこし東側の赤羽根ロングビーチに着いたのは5時半過ぎだった。

ビーチ前にはすでに何台もの車が止まっており、ローカルサーファーたちであろう十数人が左端の岩場の前にかたまって入っていた。

ロングビーチというだけありその右はかなり先まで開けており、所々に数人のサーファーが入っているだけだった。

 

1時間半のサーフィンを楽しみ、次はフェリーに乗るべく伊良湖岬に向かった。

伊勢まではここからフェリーに乗り55分後には鳥羽に着き、そこからは車で30分ほどである。

鳥羽は演歌歌手・鳥羽一郎の鳥羽であり、真珠のミキモトでも有名な街で温泉もあり、海、山、島など自然の眺めが美しいところでもある。

前々回の数年前にもこの3人で伊勢参りをしたときには、鳥羽まで足を延ばし温泉に浸かって旅の埃を落としたが、今回はすでに海で清めているのでスル―した。

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伊勢は外宮、内宮の順でお参りするのが一般的なのだが、前回から内宮の前に月讀宮にお参りすることにしている。

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ひと通りのお参りを終え、おはらい町で伊勢うどんと赤福を堪能した。

店内で赤福を食べると3コ食べないといけないが、実は甘党の僕でもこれは案外キツイ。

お土産用の1パック3コ入りを買って橋の上で一人一個づつ食べた。

1コ食べると後引く美味さが残り、もう1コ食べたくなる。

そして2コ平らげた後の幸福感に満たされた中、3コ目でやられてしまうのだが、今回はこのパターンではない。

誰からももう1パック買おうという案も出ずに1コで終わってしまったが、どうやらこのくらいがちょうどいいのかもしれない。

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さて、昼飯を食べたばかりだが、晩飯はすでに決まっているのである。

その前にスーパー銭湯でひとっ風呂浴び、小一時間横になった。

今回のサーフトリップのもう一つの目玉は津のウナギである。

津というのは三重県の県庁所在地で伊勢から車で1時間程のところにあり、知る人ぞ知るウナギが有名な町であり、ソウルフードがウナギというイケてる街である。

そこにウナギを食べに行こうという企画である。

ケンイチはうな丼(上)のごはん中盛りを後悔の色も見せずに平らげた。

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マサミと僕はごはん普通盛りにした。

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西のウナギは東のウナギと違って蒸さないので、身はふわっと皮はぱりっとしていて食感が良く、箸で持ち上げてかぶりついてからご飯をかき込むことができるのである。

ずっと思っていた西のウナギを食べてみたいという思いが実現した瞬間であり、食べ物は人を幸せにするということを実感した瞬間でもあった。

帰り際レジのおネエちゃんに東京から食べにきたと言ったら、ウナギのように目を丸くして驚いていたが、また来て下さいと愛想良く商売上手なところはさすが関西人だと思った。

 

帰路は新東名の浜松SAから東京まで僕が赤いワゴンのハンドルを握った。

道幅が広くアップダウンも少なくというか御殿場の東名との合流までほとんど登りっぱなしだが、カーブもゆるくデコボコもなく夜なのでよそ見することもなくめちゃくちゃ運転しやすかった。

さすがはべらぼうな資金を投入して作った道である。

 

マサミの家に着いたのが0時過ぎ、僕のマンションに着いたのが1時前。

ケンイチは無事帰っただろうか。

必要以外の連絡がないのはいつものことだが、このブログを書いていたらちょっと心配になりつい先程メールしてみた。

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